土地付き建物を購入する際に、売買契約書に土地と建物の金額の区分がなく、合計額で表記されているケースがあります。この場合には何らかの方法によりそれぞれの金額を確定させる必要があるのですが、この際に建物の金額をいくらにするかがが問題となります。それにより、売主と買主それぞれの税負担が変わってくるためです。
買主は建物の比率が多いほうが有利
買主としては、建物の金額を大きくすることが税務上有利となります。理由としてはまず消費税の計算において、建物の比率を大きくした方が仕入税額控除の金額が大きくなり、結果として消費税の納税額が減少します。もう一つの理由は建物は減価償却を通じて徐々に経費化される一方、土地は減価償却されないため、建物の比率を大きくした方が将来の減価償却額が大きくなり、法人税負担や所得税負担が少なくなるためです。
売主は建物の比率が少ないほうが有利
売主としては建物の金額を少なくすることが税務上有利となります。理由としては、消費税の計算において建物の譲渡は課税、土地の譲渡は非課税とされているためです。売主は建物の売却による消費税を納める必要がありますが、建物の比率を少なくした方が消費税の納税額を抑えることができるためです。
土地建物金額の案分方法
案分金額は合理的な方法により計算しなければなりません。実務でよく行われるパターンは以下のような方法です。
①消費税額から逆算するパターン
売買契約書に土地建物の金額が一括で記載されているものの、但し書きなどで消費税の金額が表記されている場合があります。この場合にはこの消費税の額から逆算する方法により計算します。具体的には総額1億400万円(うち消費税は400万円)とある場合には、400万円に対応する部分が建物となるため土地の金額が5,000万円、建物の金額が5,400万円と決めることができます。
②固定資産税評価額で案分するパターン
①のように消費税額の記載がない場合には、固定資産税評価額で案分する方法が実務上よくつかわれます。総額1億円の契約がある場合に固定資産税評価額が建物2,000万円、土地3,000万円だった場合には、建物の金額が4,000万円、土地の金額が6,000万円と計算することができます(消費税を加味しない方法により計算していますが、建物の固定資産税評価額は消費税別であると考えて計算する場合もあります。税務署さん側としては建物の固定資産税評価額は消費税込みであると考えるのが基本スタンスの様です…)
③土地建物どちらか一方の金額を決めて、差額をもう一方の金額にするパターン
土地であれば路線価や固定資産税評価額から時価を計算する。建物であれば税務署が公表している「建物の標準的な建築価額」をもとに計算する方法があります。それぞれで計算した金額を総額からマイナスした差額を、もう一方の金額とする方法です。ただし、この方法は場所や建物の種類によっては時価と大きくかけ離れた金額になってしまう可能性があります。
④不動産鑑定士に依頼するパターン
一番確実ですが鑑定料がかかってしまいます。固定資産税評価額や路線価があまりにも時価からかけ離れているため、②や③の方法だと税負担が高くなってしまうような場合には採用するとよいでしょう。
以上のような方法の中から、有利な方法を選択するのが良いでしょう。またそれぞれの方法を組み合わせて数値の説得力をあげることにより、税負担を少なくし、かつ税務否認リスクを避けることも考えるべきでしょう。
編集後記
妻の両親からいただいたお土産の日本酒。サミットで出されて話題になったお酒です。
この「作」といい、「而今」といい、三重県のおいしい日本酒って意外と多いですね。個人的には「三重錦」とかも好きです。