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贈与税の基本的ルールとよくある勘違い

 最近はインターネットの普及で、一般の方々が税に関する知識を割と簡単に手に入れることができるようになっています。しかし、その弊害というか、ご自身で勝手な解釈をされて、間違った対策を行っている方も多く見えます。何事も基礎が大事!ということで基礎的なルールを解説させていただきます。今回は「贈与税」です。※相続時精算課税についてはまた別の機会に解説します。

1.贈与税の非課税枠は年間「110万円」

 これは皆さんご存知ですね。ご家族に110万円の贈与を行っているという話も多く耳にします。年間110万円までならば贈与により財産をもらっても、贈与税の対象にはなりません。

2.毎年1月1日から12月31日までに受けた贈与について、翌年2月1日から3月15日までに申告・納税する。

 その年に受けた贈与の金額が110万円を超えていたら、贈与税が発生します。贈与税については1年間の贈与をまとめて翌年2月1日から3月15日までに申告・納税します。納税はもらった人の住所地の所轄税務署に対して行います。贈与税については電子申告が可能です。

 納税方法はいろいろあります。税務署や金融機関で現金で支払う方法、インターネットバンキングなどを利用した電子納税、専用サイトからのクレジットカード納付、コンビニ(QRコード)納付(30万円以下の納付に限ります。)が可能です。

3.よくある勘違い・誤解

(1)110万円の非課税枠を”あげた”金額ベースで考えている?
 この110万円というのはもらった金額ベースで考えます。あげた金額ベースでないことにご注意ください。ちょっとわかりにくいですね。次のようなケースを考えてみましょう。
 お父様とお母様からそれぞれ110万円ずつの贈与を受けています。この場合には贈与税の対象になります。贈与を受けた人はその年中に受けたすべての贈与について合計し、この金額が110万円を超えて入れば贈与税の対象になります。上記の場合は合計で220万円となるので贈与税を納める必要があります。

(2)贈与は子供にしかできない?
 贈与は誰にしていただいてもOKです。子供はもちろん、孫、子供の配偶者、自分の兄弟姉妹、甥、姪など誰に行っていただいても構いません。

 孫への贈与ならば一世代飛ばしになるので、効果は大きいです。子供への贈与に関してはもちろん行っていただいて大丈夫ですが、「3年内加算」という制度にお気を付けください。これは相続が起こってしまった際に、その相続発生前3年内に相続人に対して行った贈与については、相続税を計算する際の財産金額に持ち戻して計算するという規定です。贈与により財産は手元にないのに、相続税を計算するうえではその財産が手元にあるものとして計算するわけです。

 子供は相続人になりますので、亡くなる前3年内の贈与に関しては相続税に足しなおされてしまいます。この点から見ても孫への贈与が効果的だということがわかります。孫は孫養子になっていたり、遺言で指定されている等の理由がないと相続人にはなれませんので、3年内加算と関係ない場合が多いからです。

(3)名義預金になってしまっている?
 お子様、お孫様名義の通帳を作って、毎年そこへ贈与税の非課税の範囲内でお金を振り込んでいるという方は多く見えます。ところでその通帳の存在をお子様やお孫様はご存知でしょうか?通帳や銀行印はそれぞれがお手元で保管していただいているでしょうか?

 このことは贈与が行われたのかどうか、というそもそもの判断に影響します。贈与というのは契約であり、あげる方の「あげた」という意思表示ともらった方の「もらった」という意思表示があって初めて成立します。また贈与したものをもらった側がちゃんと管理している状況でないと、税務署は贈与があったとは判断してくれません。もらった側が通帳の存在を知らないというのは論外ですが、通帳や銀行印を管理していないのであれば、贈与が行われたとは言えず、いくら名義が子供や孫の預金であったとしても、贈与した人の財産であるとされます。このような預金を「名義預金」と言って、相続税の調査でよく問題になる点の1つです。

(4)贈与は110万円にとどめた方が良い?
 贈与額を110万円に留めれば贈与税は発生しません。ただし場合によっては110万円にこだわらず、贈与税を払ってでももっと高額の贈与をした方が良い場合があります。

簡単な例で説明します。
総財産が5億円で相続人が子供一人のみの方が、10年後に亡くなった場合の比較です。パターンAは孫一人に10年間110万円の贈与を続けました。パターンBは孫一人に10年間1,000万円の贈与を続けました。

 いかがでしょうか?贈与税を払ってでも高額の贈与を行った方が、トータルの税額が安くなることがわかります。相続税の負担率が大きい場合には110万円という金額にこだわる必要はありません。いくらがベストかというのは相続税の概算計算を行って判断していきます。

編集後記
今月読んだ本は当たりが多かった。「FACTFULNESS」、「図書館の魔女 ※文庫で全4巻」、「NEWTYPE」。「FACTFULNESS」と「図書館の魔女」は今年のベストテン入り確実。

 

 

 

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