居住用不動産の3,000万円控除~同じ敷地に建物が二つ~
同じ敷地の上に建物が2棟立っている場合には、その建物の使用状況により3,000万円控除の適用方法に差が発生します。
居住用不動産を譲渡した場合の3,000万円特別控除は、その譲渡をした者が2つ以上の家屋を有する場合には、その者が主として居住の用に供していると認められるものについてのみ認められます。そのため、2棟の建物が建っている場合にはどちらか一方のみしか適用できないのかと思えます。しかしその建物が隣接しており、かつそれらの建物の設備の状況(台所、トイレ、ふろなどの設置状況)、その建物に住む家族の生活の状況から考えて2棟の建物が一体の機能を有すると認められる場合には2棟の建物で一つの居住用家屋として取り扱います。
パターン1
このようなケースではAの息子が居住している建物および、その建物の敷地部分については特別控除の対象とはなりません。それぞれの建物に別生計の家族が居住している場合には2棟以上の建物を機能を一体とする一つの建物とすることはできません。
パターン2
この場合にはBと両親の生計が一であること、また台所や風呂が共用であるといった設備の状況からみても、2棟の建物が機能を一体とする一つの建物といえるため、両方の建物および敷地全体について特別控除の対象とすることができます。
2棟以上の建物がある場合の居住用不動産の3,000万円控除については以下のような裁決事例があります。
平成21年11月20日裁決
<租税特別措置法施行令第20条の3第2項及び第23条第1項は、個人がその居住の用に供している家屋を二以上有する場合には、本件特例の適用対象となる家屋は、主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限る旨規定しているところ、本件特例の適用対象となる家屋の判定に当たり、二棟以上の家屋が併せて一構えの家屋であるといえるか否かについては、まず、それぞれの家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離等の客観的状況によって判断すべきであり、個人及びその家族の使用状況等の主観的事情は二次的に考慮すべき要素にすぎないものと解するのが相当である。したがって、単にこれらの家屋がその者及びその者と同居することが通常である親族等によって機能的に一体として居住の用に供されているのみでは不十分であり、家屋の構造、規模、設備等の状況から判断していずれか又はそれぞれが独立の居住用家屋としては機能できないものでなければならない。そうすると、これらの家屋がそれぞれ独立の家屋としての機能を有する場合には、これらの家屋を併せて一構えの家屋であるとは認められず、その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限り、本件特例の適用対象となるというべきである。
この採決事例では、2棟の建物が建っている場合の特別控除の適用については、設備の状況のような客観的要素によりまず判断することが示されています。単に生計一の家族の居住用であるだけでは、不十分となる可能性もあるのでご注意ください。